定価:2,970円(税込)
編・著者名:野村 剛司[監修]
発行日:2025年03月28日
判型・体裁・ページ数:A5判・並製・232ページ
ISBNコード:978-4-322-14507-6
事業譲渡を活用して、
会社の事業を「残し」「活かす」
債権者、経営者、取引先、従業員、地域経済の利益確保を目指す
破産手続併用型事業譲渡
その手法と留意点を、事例を通じて分かりやすく解説します
コロナ禍の影響で各事業者の体力も低下し、スポンサー候補者の探索が難しくなりつつあり、仮にスポンサー候補者が現れても、優先する債権を賄えるだけの支援金額の提示を受けられず、私的整理や民事再生、特別清算による処理ができずに破産に至る事案の増加が予想されるところです。
このような場合、スポンサーに事業譲渡したうえで破産すること(あるいは申立代理人が事前に関係者間の調整や事実上の条件のすりあわせなどを行い、保全管理人や破産管財人が事業譲渡を実行すること)が考えられ、これを迅速かつ適切に実現することが重要となります。
破産等の清算型の手続しか選択できない場合であっても、その法人の事業の全部又は一部を残すことができないか――本書では、事業譲渡等を行うことで事業を生かしつつ、法人については破産等の申立てを適正・迅速に行う、という手法を紹介します。 (本書「はしがき」より)
第1部 破産手続併用型事業譲渡のプロローグと総説
破産の場合でも事業を残す余地はある/事業を残すメリット/申立代理人・破産管財人に求められる姿勢/申立代理人が検討すべき事項の全体像
第2部 ストーリー別にみる「破産手続併用型事業譲渡」
スタンダードな事案~ナノハナ衣料のストーリー
小規模事業者の事案~ツクシ建装のストーリー
担保権者との交渉が必要となる事案~タンポポ製菓のストーリー
第3部 テーマ別解説
第1章 初回相談の確認事項と事業譲渡の可能性についての検討
初回相談の聴取事項/譲渡可能な事業及び資産・負債の見極め、譲渡可能性の検討/事業・資産状況の見極め/滞納処分を意識した対応
第2章 事業承継先(スポンサー)の探索と選定
事業承継先の探索方法/スポンサーの選定方法(入札手続の手法等)
第3章 手続選択
第4章 事業譲渡対価の適正性確保
検討の前提としての事業価値の把握/清算価値の把握と清算配当率の算定/事業譲渡対価の検討・検証
第5章 事業譲渡契約の内容
事業譲渡契約の内容と留意点/商号続用責任
第6章 ステークホルダーへの意識―事前の調整と説明―
第7章 労働契約の取扱い
従業員の承継方法/承継対象従業員の決定方法/事前協議の要否/承継されない従業員への対応/譲渡会社に労働組合がある場合
第8章 事業停止日前後の要対応事項
Xデー(事業停止日)の要対応事項/Xデー後の要対応事項と破産申立準備/裁判所への事前相談、破産管財人との協働
第9章 親族や従業員に対する事業承継
親族や従業員に対する事業承継の留意点/第二次納税義務についての検討の必要性
第10章 許認可
第11章 資産別にみる留意点①(担保不動産・リース)
譲渡対象に担保不動産がある場合の対応/担保権者との交渉/譲渡対象にリース物件・割賦物件がある場合の対応
第12章 資産別にみる留意点②(賃借不動産)
申立代理人において賃借不動産の明渡しを行うことの要否/明渡作業・賃貸人対応における留意点/譲渡対象に賃借不動産がある場合の対応
第13章 資産別にみる留意点③(知的財産権)
第14章 破産管財人・保全管理人との連携
第15章 スタートアップ企業
スポンサー探索/譲渡対価の相当性/プログラムの著作物の取扱い/共有の知的財産権/拒否権に関する確認
第4部 座談会
執筆しての気づき/破産事案でも事業を残す余地はある/破産局面における「よい」事業譲渡/早期相談の重要性/債務者代理人に求められる姿勢/破産管財人の立場から/将来への希望・展望
第5部 参考書式
資金繰り表(日繰り表)/資金繰り表(月次)/清算貸借対照表/入札要綱/秘密保持契約書/意向表明書/事業譲渡契約書/株主総会議事録/同意書/取引先挨拶状/従業員説明文書/担保解除依頼書/裁判所事前相談メモ/事業譲渡に関する報告書
【コラム】
事業停止による影響が大きく事業を継続せざるを得ない事案/事業譲渡か、会社分割か/資産譲渡か、事業譲渡か/スポンサーが取引債務の一部のみを承継する場合/事業譲渡の否認に関する若干の検討/事業譲渡対価の適正性と清算価値保障原則/金融債権者への事前説明の要否・タイミング・留意点/中退共の継続・移換/個人事業者の事業継続の可否/事業譲渡に関する株主総会決議と破産手続
事項索引