中国経済はなぜ崩壊しないのか: 不動産市場と財政金融システム (KINZAIバリュー叢書)

中国経済はなぜ崩壊しないのか: 不動産市場と財政金融システム (KINZAIバリュー叢書)

定価:1,650円(税込)

編・著者名:柴田 聡/塩島 晋[著]

発行日:2024年11月08日

判型・体裁・ページ数:四六判・並製・176ページ

ISBNコード:978-4-322-14482-6

書籍紹介

苦境に立つ中国経済の真相に迫る

アジア開発銀行第9代総裁 元財務官 中尾 武彦氏 推薦!

「不動産の低迷に揺れる中国経済の行方、そのメカニズム解明に挑戦した渾身の分析。金融庁で日中金融協力を長年にわたり主導し、中国の経済・金融に精通する筆者ならではの考察が凝縮された一冊。」

主要目次

第1章 中国不動産市場の低迷と混乱――大手デベロッパーの経営危機

1 「保交楼」政策―買ったはずの家が引渡しされない?

2 大手デベロッパーの窮状

3 今後の展開はどうなるか――中国当局は「保交楼」を最優先

4 デベロッパー業界でも「国進民退」が進行

第2章 中国の「不動産バブル崩壊」は本当か

1 中国の不動産統計――主要70都市を3区分

2 中国の不動産下落は過去にも発生――チャイナショック時との比較

3 デベロッパーの四重苦――売行低迷、新規着工減、完成在庫増、保交楼

4 不動産テコ入れ策と今一つの政策効果

5 住宅市場はクラッシュするのか――問題の本質は「若年層所得」と「地方間格差」の2つ

6 日本のバブル崩壊との違い

第3章 中国の地方債務問題

1 不動産市場と地方財政の深いリンケージ――土地使用権譲渡金は貴重な地方財源

2 債務リスクが深刻な東北部・内陸部の地方都市――1線都市や沿海部との違い

3 「隠れ債務」の実態――地方融資平台「LGFV」のカラクリ

4 地方債務のサステナビリティ――抜本的解決よりまずは目先のキャッシュフロー

5 地方債務問題の今後の展開

第4章 中国の不動産金融

1 不動産金融の担い手は誰か――上場銀行の最新データからみえること

2 不動産融資はどれだけ不良債権化しているのか――経済基盤の脆弱な地域は高水準

3 大手国有銀行の「不良債権プール機能」――中央政府の政策ツールとしての大手国有銀行

第5章 中国の金融システム《マクロ編》

1 不動産市場発の金融危機は起きるのか?

2 金融システム全体の健全性――不良債権を上回る当期純利益と引当金、さらに自己資本

3 300兆円規模の不良債権処理――日本の金融危機時の約3倍の規模

4 信用秩序維持に向けた制度整備

第6章 中国の金融システム《地方金融編》

1 問題の個別解決が必要な地方金融

2 ガバナンス問題行の個別破綻処理事例――治安維持のための非常措置と責任追及

3 地方性銀行の合併再編の推進――経済基盤脆弱地域の「1省1行」構想

4 財務基盤が脆弱な地方性銀行への資本注入――地方政府は地方債発行で財源調達

5 地方金融への監督強化――中央政府主導で金融リスクを管理

終 章 中国経済が崩壊しない理由

1 考察のポイント

2 不動産市場と経済金融の全体構造を可視化する

3 中国の「最後の砦」――政府・金融部門に蓄積したリスクは結局どうするのか

4 中国経済は復活するのか

5 住宅需給対策では特に保障性住宅に注目

6 住宅市場の成長ポテンシャルと2027年の次期党大会

著者紹介

柴田 聡(金融庁 研究参事(中国金融)、地域経済活性化支援機構 常務取締役、広島大学 客員教授)

1992年大蔵省(現財務省)入省。2008年から在中国日本国大使館参事官として北京に4年間駐在。2016年金融庁監督局銀行第二課長。2017年から金融庁総合政策局参事官(国際担当)として日中金融協力を主導。2019年金融庁総合政策局総務課長、2021年財務省中国財務局長。2022年6月から現職。

塩島 晋(野村資本市場研究所 副主任研究員)

2008年野村證券入社、2018年野村資本市場研究所研究部。2021年金融庁総合政策局総務課国際室に出向し、中国金融専門調査員を務める。2024年4月から現職。幼少期から大学まで18年間、中国で生活。中国の現地情報を駆使した中国資本市場分析が専門。