金融マトリックス―国債と銀行の運命

金融マトリックス―国債と銀行の運命

定価:3,080円(税込)

編・著者名:磯野 薫[著]

発行日:2022年07月22日

判型・体裁・ページ数:A5・並・268ページ

ISBNコード:978-4-322-14160-3

書籍紹介

誰かの金融資産は

誰かの金融負債である――

日銀の資金循環統計からその原理を読み解き、資金運用・リスク管理上のインプリケーションを探る

金融資産・負債は人がつくった契約であり、同じ契約の一方の当事者にとっては金融資産、もう一方の当事者からは金融負債となる。すべての金融資産と金融負債は表裏一体であり、同じ残高、同じ動きとなる。金融資産と金融負債を集計した資金循環統計(金融マトリックス)の「原理」を解説し、様々な金融事象をその動きから分析。資金運用、ALM、リスク管理・収益管理に役立てる方法を提示する。

主要目次

第1章 金融マトリックス総論

日銀が四半期ごとに公表/ストックとフローの金額の推計/調整金額/国内非金融部門/金融機関/海外

第2章 マトリックスの原理

1 【原理1】 誰かの金融資産は誰かの金融負債

金融資産・金融負債の合計額は一致/金融機関の機能/中央銀行の決済手段と金融負債サイドの株式・出資金/純金融資産額

2 【原理2】 決済手段が銀行の金融負債として供給・計上されている

経済主体の決済手段総額は変化しない/決済が銀行の金融負債で行われることのマトリックス上の意味

3 【原理3】 金融元本取引では資金過不足は発生しない

非金融元本取引では資金過不足が発生/部門内の取引は相殺

4 【原理4】 純金融資産の変化はフローの資金過不足と時価変動の合計

大きい時価変動の影響

5 【原理5】 外貨売買では海外・国内部門ともフローの資金過不足は発生しない

外貨売買も金融元本取引

6 【原理6】 経常黒字を超える円投は必ず円転者がいる

直物外貨ポジションの発生要因/対外資産負債残高との一致

7 一般銀行と日銀の資金調達構造・決済手段サイクル

流動性預金/流動性預金と日銀の決済手段との交換/日銀の決済手段/日銀預け金の総額は日銀がコントロール/資金市場が円滑に機能していない場合/サークルCとサークルBの量的関係

第3章 日銀預け金による国債の代替効果

日銀の負債の性質/日銀預け金増加の波及効果/日銀預け金の現状/短期市場金利の誘導方法に関する懸念/保有資産としての日銀預け金の性質/日銀預け金と国債の比較/日銀預け金は最強の調達手段

第4章 円投・円転とヘッジ付き円投・円転の採算構造

円投・円転構造の概念/銀行の役割/円投・円転の場所とマトリックス上の動き/対外資産・対外負債の増減/ヘッジ付き円投・円転の採算構造/ヘッジ付き円投の収益構造 

第5章 マトリックスからみた国内経済の脆弱性

金融資産・負債構造の特徴と脆弱性/赤字部門から黒字部門への資金フロー/巨額の国債残高と超低金利/脆弱性その1――銀行収益への影響/対外投資へのシフト/脆弱性その2――外貨選好の高まりと外貨準備不足

第6章 LTCM vs. LTCB

LTCB危機顕在化でも円高に/1997年~1998年の内外金融情勢/国内金融危機時のマトリックスの動き/円キャリー・トレード対邦銀の為替ポジション/円投構成の脆弱性 

第7章 新型コロナウイルス感染拡大の影響

非金融部門の金融負債が急増/非金融部門の資金調達フロー/家計・企業ともに現預金積上げ/国内銀行のドル調達動向

第8章 マネタリーベースゼロの世界とマネタリーベースだけの世界

新たな決済手段と暗号資産の登場/マネタリーベースがない世界とは/マネタリーベースゼロのシミュレーション結果/日銀預け金残高ゼロを維持する方法(クリアリングハウスモデル)/日銀預け金の廃止/クリアリングハウスモデルの一般型/マネタリーベースしかない世界(決済手段の供給は中央銀行のみが行う世界)/マネタリーベースのみのシミュレーション結果/決済手段に100%準備預金を課したケースのシミュレーション結果

著者紹介

磯 野  薫(いその かおる)

1956年生まれ。1978年:東京大学経済学部を卒業、日本長期信用銀行に入行。2000年10月:新生銀行 市場リスク管理部長、2004年4月:りそなホールディングス・りそな銀行 執行役 リスク統括部担当兼コンプライアンス統括部担当、2009年6月:りそなホールディングス 取締役 監査委員会委員長、2010年6月:同 取締役 監査委員会委員、2017年11月:関西みらいフィナンシャルグループ 取締役監査等委員会委員長、2018年4月:同 取締役(現任)。