定価:2,530円(税込)
編・著者名:藤井 良広[著]
発行日:2021年02月22日
判型・体裁・ページ数:四六判・並・296ページ
ISBNコード:978-4-322-13848-1
サステナビリティの最適解はどこにあるのか
■持続可能な社会を築くファイナンスの未来の姿とは? リーマンの「敗北」とパリ協定の「希望」をつなぎ合わせられるか。バイデン政権登場で、グローバル協調に向かうか、それとも新たな競争か――。
■これから始まる“サステナブルファイナンス第二ラウンド”を目前に、環境金融の専門家である著者が、パリ協定以降欧米で繰り広げられたサステナブルファイナンスの基準をめぐる攻防や背景、多様な取組み、そして日本の動向を追う。
第1章 サステナブルファイナンスへの始動
シカゴの街角で/財務と非財務の距離をどう埋めるか/国連主導の金融イニシアティブ/トリプルボトムラインからESGへ/PRIの誕生/グリーンボンドの登場/EUを動かした欧州債務危機/資本市場同盟(CMU)の模索/EU―ETSの機能不全/揺れ動く米国の環境・気候変動政策/「不在」だった米国の「帰還」/動き出した日本、「転換」できるか
第2章 「グリーンスワンを捕まえろ」―基準化の競い合い
パリの寒空の下で/各国間に加え「プラスアルファ」の綱引き/浮上する「グリーンスワン」のリスク/先行した英国勢/英国のEU離脱政策の影響/EU・HLEGの展開/官民連携のフランス戦略/シンクタンク「2°II」の役割/出遅れたドイツ/浮上する中国の存在感/UNEP Inquiryの役割/UNEP FIの積極行動/PPIFからPRBへ/デンマークの反乱
第3章 気候リスク情報をキャッチせよ
「共有地」から「ホライゾン」の悲劇へ/カーニーのリーダーシップ/TCFDとは何だったか/TCFDな人々/TCFD提言の「野心性」/NGFSの登場/NGFSが示すシナリオ/金融機関のTCFD対応/TCFDコンソーシアムの“勘違い”/TCFDから財務・非財務情報の統合化に向かう/主導するオランダ勢/米銀のPCAF参加/カーニーのクレジット市場づくり/「グリーン自己資本」の評価/非財務情報団体の合従連衡は/IASB/IFRSはMCからSSBへ/非財務情報開示制度の強化/自主的非財務情報開示団体の動き/スタートアップNPOだった/CDP等の動き
第4章 「グリーン」を売りまくれ
グリーンボンドへの道/国際公的金融機関が先行/グリーン売出債を支えた日本の個人投資家/ウォールストリートのサステナビリティ派たち/GBPとCBIの共存/「グリーン性」の評価も容易に/チャイニーズ・ウォールの攻防/崩れたクリーンコールのカベ/役所主導の日本の基準化/GBPと報告書の「勝手解釈」/「ウィンウィン」か「ルーズルーズ」か/緩和規定の突然の削除/ISOの取組み/ISO14097:金融機関の気候貢献を規格化/米欧対立のISO14030(?)/グリーンボンド基準攻防/3票差の重み/中国のISO登場/英国提唱のサステナブルファイナンス規格/PAS7340シリーズの意味/ポーカーゲームのような攻防/日本の存在感
第5章 タクソノミー攻防
EU・TEGの登場/“TEG”な人たち/EUタクソノミーの構造/ガスと原発でのタクソノミー攻防/独仏の攻防?/バイデン米政権による影響は/日本の産業界のロビー活動/浮上したブラウン課題/市場で先行する移行ボンド/トランジションは日本の提案?/トランジションファイナンス研究会/「A」と「C」のトランジション/「国内版」に執着する経済産業省/ICMAのトランジションハンドブック/「2050年ネットゼロ」宣言と温存路線/経団連、タクソノミーで軌道修正へ/EUとICMAのさや当て
第6章 広がるサステナブルファイナンス
コロナで発動したパンデミック債/コロナファイナンスの盛り上がり/自然・生態系の財務価値は/CBDの困難さ/UNEP事務局長の「暴走」/ポールソンの対中、対自然活動/生物多様性へのファイナンス/競合する市場ニーズ/非財務ファイナンスをどう育むか
藤井 良広(ふじい よしひろ)
大阪市立大学卒。日本経済新聞経済部編集委員を経て、上智大学地球環境学研究科教授。現在、一般社団法人環境金融研究機構代表理事、CBIアドバイザー等を兼務。
主な著書に『環境金融論』(2013年、青土社)、『EUの知識 第16版(日経文庫)』(2013年、日本経済新聞出版社)、『金融NPO(岩波新書)』(2007年、岩波書店)等多数。神戸市出身。