定価:2,200円(税込)
編・著者名:田中 理/西濵 徹/桂畑 誠治/星野 卓也[著]
発行日:2021年01月21日
判型・体裁・ページ数:四六・344ページ
ISBNコード:978-4-322-13831-3
新型コロナウイルスは、中国が強権的な感染拡大封じ込め政策によっていち早く復活する一方、米国やEU諸国では「経済再開」か「感染防止」かが政治的選択化するなか、新規感染者の爆発的増加第2波、第3波に襲われた。
中国、米国、欧州、日本、新興国の経済・金融市場はパンデミックによってどのような影響を受け、いかに向き合ったのか。それぞれの地域の専門エコノミストが詳細に検証する。
第1章 コロナ危機の構図
星野 卓也
1 中国からアジア、欧州、そして米国へ
2 新型コロナウイルスがかくも厄介な理由
3 国ごとに分かれた外出規制のかたち
4 財政・金融政策は一気に危機モードへ
5 コロナ危機の特性分析──リーマン危機との比較などから
6 感染状況が回復の成否を決める「ウィズコロナ」の経済
第2章 SARSの教訓を活かせなかった中国
西濵 徹
1 なぜSARSに比べて被害が大きくなったのか
2 一転して都市封鎖に動いた当局の意図とその結果
3 感染対策の背後で加速する「デジタル・レーニン主義」
4 中国経済はV字回復を果たすことができるか
5 「ポストコロナ」の中国と世界経済の関係
第3章 コロナ危機で統合強化に向かう欧州
田中 理
1 なぜ欧州で爆発的な感染が起きたのか
2 感染封じ込めと各国の政策対応
3 危機で問われるEUの結束
4 最前線で危機対応にあたったECB
5 ブレグジット協議への余波
6 危機をバネに統合を強化する欧州
第4章 世界大恐慌以来の経済危機に直面する米国
桂畑 誠治
1 米国が世界最多の感染者、死者を出した背景
2 FRBの大規模金融・信用緩和策
3 米政府と議会による大規模な経済支援策
4 深刻な落込みからの回復力
5 コロナ危機に伸びる米IT産業
6 ウィズコロナ、ポストコロナでの米国経済のニューノーマル
第5章 グローバル化の波に飲み込まれた新興国
西濵 徹
1 中国依存があらためて浮き彫りになったアジア新興国への「第一波」
2 原油相場の暴落で産油国・資源国の脆弱性が露見
3 「強権」だけでは抑えることができないウイルスの怖さ
4 新興国に襲いかかる情け容赦ない国際金融市場の圧力
5 「ポストコロナ」も中国依存を強めざるをえない新興国
第6章 新型コロナウイルス禍の金融市場
桂畑 誠治
1 史上初のマイナス価格となった原油先物価格
2 短期間に急騰した株式市場と低水準にとどまる10年国債利回り
3 有事のドル需要の強まり
4 コロナ禍で金価格が最高値更新中
5 リーマンショック時と比べ市場の動揺は短期間で収まった
6 ドルの流動性供給のためのグローバルな枠組みが奏功
7 実体経済と株式市場のデカップリングは世界的な事象
8 コロナ禍でも新興国への資金フロー回復
9 FRBの新方針の各国への伝播
10 大規模金融緩和の出口戦略はかなりの時間が必要
11 ウィズコロナの金融市場は低金利と株高
12 ポストコロナの金融市場は政策変更がリスクに
第7章 揺れに揺れた日本の経済政策
星野 卓也
1 日本における政府のコロナ対応
2 甚大だった経済へのダメージ
3 大規模経済対策と噴出した問題点
4 雇用調整助成金はどこに問題があったのか
5 デジタル行政の遅れが効率的対策の実施を阻む
6 高まる「ジョブ型雇用」気運
7 広がらない裁量労働制の現状
8 「雇用を守る」は正義か
9 フリーランスのセーフティネットの弱さが露呈
10 コロナは10年後にどう振り返られるだろうか
第8章 コロナ危機後の世界
田中 理
1 危機後の回復の姿は?
2 中銀依存の罠に陥った世界経済
3 危機で浮き彫りとなる格差
4 グローバル化の逆流が始まる?
5 世界で失われる教育機会
6 社会変革で危機を乗り越える
田中 理(たなか おさむ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主席エコノミスト
1997年3月、慶應義塾大学法学部卒。青山学院大学修士(経済学)、バージニア大学修士(経済学・統計学)。1997年4月、日本総合研究所入社。調査部にて米国経済・金融市場を担当。その間、日本経済研究センターに出向。2001年7月、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現:モルガン・スタンレーMUFG証券)入社。株式調査部にて日本経済担当エコノミスト。海外大学院留学を経て、2008年7月、クレディ・スイス証券入社。株式調査部にて日本株担当ストラテジスト。2009年11月、第一生命経済研究所入社、2012年1月より現職。担当は欧州経済。多摩大学非常勤講師(2015~2020年)。
西濵 徹(にしはま とおる)
第一生命経済研究所 経済調査部・主席エコノミスト
2001年、一橋大学経済学部卒
2001年、国際協力銀行入行。同行においてアジア(東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア・コーカサス)向け案件審査・監理、アジア・東欧・アフリカ向けソブリンリスク審査などを担当。2008年に第一生命経済研究所に入社、2015年より現職。アジア、オセアニア、中東、アフリカ、ロシア、中南米などのマクロ経済及び政治情勢分析を担当。
桂畑 誠治(かつらはた せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト
1992年、日本総合研究所入社。1995年、日本経済研究センターに出向。1999年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年より現職。米国経済・金融市場・海外経済総括のほか、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
星野 卓也(ほしの たくや)
第一生命経済研究所 経済調査部・副主任エコノミスト
2011年、一橋大学経済学部卒。2021年3月、一橋大学大学院経営管理研究科・金融戦略経営財務専攻を卒業見込み。
日本経済の分析・予測を専門。財政・社会保障・労働など制度知識を背景にした経済構造分析、政策提言なども行う。
跡見学園女子大学非常勤講師、景気循環学会幹事を務める。社会保険労務士、国際公認投資アナリスト(CIIA)。