融資業務再生の処方箋
米銀と邦銀の融資管理はどこが違うか

融資業務再生の処方箋<br><small>米銀と邦銀の融資管理はどこが違うか</small>

定価:2,547円(税込)

編・著者名:佐藤満(著)

発行日:2017年07月12日

判型・体裁・ページ数:四六・上製・264ページ

ISBNコード:978-4-322-13089-8

書籍紹介

サブプライム金融危機の最中、三菱東京UFJ銀行からユニオン・バンクに派遣された日本の銀行マンが融資管理の現場で体験したこととは?

◆2005年4月、著者は東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)からアメリカ、カリフォルニア州にあるユニオン・バンクへと赴任した。職責は、Global Credit Liaison Division(GCLD)のヘッド。経営トップ(CEO)は日本人ながら、アメリカ人のために、アメリカ人によって運営される同行の融資業務に対して、日本の親銀行の立場から一定の牽制機能を果たすことが使命とされた。

◆そこで体験した米銀の典型的な融資管理の姿は、邦銀とは大きく異なるものだった。著者は日米のカルチャー・ギャップに衝撃を受ける一方で、ユニオン・バンクの融資管理制度の合理性に感銘を受けた。しかし、その頃、アメリカ経済にはサブプライム・バブル崩壊の影が忍び寄っていた。証券化商品の暴落は投資銀行の経営悪化、金融市場の収縮を招き、実体経済の悪化につながった。ユニオン・バンクの融資ポートフォリオもその影響を受け、融資管理部門は非常時対応を余儀なくされた。

◆本書では、営業現場に対して採上げ可能な案件の典型を示すアンダーライティング・ガイドライン(Underwriting Guideline)、融資元本ベースで企業グループごとの与信限度額を示すハウス・リミット(House Limit)、経済資本ベースで業種ごとの与信限度額を示すコンセントレーション・リミット(Concentration Limit)、これらと有機的に連動する格付制度など、ユニオン・バンクの融資管理ツールの詳細が明らかにされる。これらは経済資本を基軸とした銀行全体のリスク管理と有機的な関係をもつ。

◆米銀の融資管理のあり方は邦銀のそれとどのように異なるのか? それは金融危機のなかでどのように機能したのか? 米銀の融資業務の実態は、閉塞感に悩む邦銀の融資業務の改革の方向性に一筋の光を投げかける。

主要目次

序 章 ユニオン・バンクへの赴任
第1章 リーマン・ショック前の融資運営
第1節 ユニオン・バンク着任と一定の兆候
第2節 住宅ローン・ポートフォリオ
第3節 商業不動産融資ポートフォリオ
第4節 電力事業融資ポートフォリオ
第5節 石油・ガス事業融資ポートフォリオ
第6節 ユニオン・バンクの融資ポートフォリオの総括
第2章 ユニオン・バンクの融資管理制度
第1節 融資管理の基本コンセプトと制度体系
第2節 融資管理の外部組織
第3節 融資管理の内部組織
第4節 ユニオン・バンクの融資管理制度 ――融資規定のあるべき姿とは
第5節 融資管理制度の各種ツール ――先進的な米銀スタンダード
第6節 ユニオン・バンクの融資管理制度の動態的把握
第3章 リーマン・ショック発生後の融資対応
第1節 サンフランシスコの北側に位置する小さな町
第2節 2006年――繁栄と不安の交錯
第3節 2007年――嵐の到来
第4節 2008年――100年に一度の破局の到来
第5節 2009年――外部環境は安定化へ、しかし内部環境は最悪
第6節 リーマン・ショックの影響の総括
第7節 リーマン・ショック後の国際的な金融規制の強化
終 章 邦銀の融資業務の再生のために
第1節 邦銀と米銀の融資制度の比較
第2節 日米の融資制度の違いの背景
第3節 邦銀の融資業務再生への展望