不動産ファイナンスの再生・回収実務

不動産ファイナンスの再生・回収実務

定価:2,860円(税込)

編・著者名:虎門中央法律事務所 弁護士 今井和男/弁護士 佐藤亮 編著

発行日:2012年08月17日

判型・体裁・ページ数:A5・280ページ

ISBNコード:978-4-322-12152-0

書籍の説明

著者の略歴

■虎門中央法律事務所
■今井 和男
1983年4月 弁護士登録。虎門中央法律事務所 代表弁護士
『銀行窓口の法務対策3800講(V)』(共著)金融財政事情研究会、『SPCを用いた不動産ファイナンスのストラクチャーとその保全のありよう』季刊事業再生と債権管理130号、『債務名義の執行力強化~あるべき民事司法の実現のために~』法の支配(日本法律家協会)
■佐藤 亮
2004年10月 弁護士登録・虎門中央法律事務所 入所
『新訂 貸出管理回収手続双書 回収』(共著)金融財政事情研究会、『デフォルトした不動産ノンリコースローンの譲渡と不良債権投資』季刊事業再生と債権管理130号、『不動産ノンリコース・ローンにおける担保権実行の実務』銀行法務21 717号(経済法令研究会)

書籍紹介及び目次抜粋

ケーススタディ方式で不動産ノンリコース・ローン(NRL)の有事に対応する再生と回収の極大化手法を詳解!
◆不動産ファイナンスのマーケット分析から、設例を用いながら、様々なプレーヤーが登場するSPCを活用した不動産ノンリコース・ローンのスキームを解説する!
◆リーマン、ソブリンショックなど国際的な不動産ファイナンスの有事に備える金融機関、機関投資家、投資事業会社、サービサー会社、法曹関係者、司法書士、税理士、会計士にとっての待望の書!
●主要目次●
第1章 不動産ファイナンスの現状
1 レンダーの立場による現状認識と今後の展望
2 レンダーにおける不動産ファイナンスの現状分析
3 不動産ノンリコース・ローンのストラクチャーとレンダーの保全
第2章 不動産ファイナンスの再生実務
1 レンダーによるリファイナンス
ケーススタディ編 〈リファイナンスの条件として「TMKクロス化」をしたケース〉
解説編
2 スキーム当事者のデフォルトとそのキックアウトによるリストラクチャリング
ケーススタディ編 (1)〈投資家サイドの協力を得られないまま、アセットマネージャー及びマスター・レッシーを交代させたケース〉
ケーススタディ編 (2)〈AMキックアウトによりリストラクチャリングをしたケース〉
解説編
3 開発型案件の再生
ケーススタディ編 〈レンダーとゼネコンが既存TMKを利用して共同事業化によるリストラクチャリングに成功したケース〉
解説編
4 不動産ファイナンスの再生に関わる税務
第3章 不動産ファイナンスの回収実務
1 不動産信託受益権質権の私的実行
ケーススタディ編 〈TK出資者の抵抗を排除して私的実行に及ぶことができたケース〉
解説編
2 不動産信託受益権質権の私的実行に関する登記実務
ケーススタディ編 〈サービサーにおいて私的実行がされたケース〉
解説編
3 不動産信託受益権質権の法的実行
ケーススタディ編 〈不動産信託受益権質権の法的実行により回収したケース〉
解説編
4 一般担保の実行
ケーススタディ編 〈一般担保の実行により不動産を競売したケース〉
解説編
第4章 不動産ノンリコース・ローンの債権譲渡、その他
1 SPC社員持分質権の実行
ケーススタディ編 (1)〈GK社員持分質権を実行して物件を一時的に取得し、バリューアップを図ったケース〉
ケーススタディ編 (2)〈GK社員持分質権を実行して、借地上の建物の再開発を行ったケース〉
解説編
2 不動産ノンリコース・ローンの債権譲渡
ケーススタディ編 〈シニアローンを譲渡して早期に回収を図ったケース〉
解説編
3 スポンサーリコース
解説編
「推薦文」
 不動産ファイナンスは、予定調和を前提としたファイナンスである。すなわち、対象不動産の賃貸借により想定どおりのキャッシュが入ってきて利息の支払がなされることや、リファイナンスの実行または対象不動産の処分により元本の返済がなされることを前提として、金融機関は不動産ファイナンスを実行するといってよい。そして、そのようにキャッシュ・フローがいわば自動的に分配されることこそが不動産ファイナンスの核心であるため、対象不動産を保有しているSPCの取締役は、名目的な存在であり、ファイナンス・スキームを離れて独自に意思決定・執行しないものとされている。
 ところが、予定調和が実現しないときには、不動産ファイナンスは脆弱である。もちろん、想定される危機に備えて、レンダー、エクイティ投資家、信託銀行、アセット・マネージャー、プロパティ・マネージャー等の利害関係人がどのように行動すべきか、あるいは行動することができるかが、諸契約の中に書き込まれてはいる。しかし、諸契約の結節点に立っているのはSPCであるため、諸契約において想定されているようなスピード感で意思決定がなされ、契約上の義務が履行されるとは限らない。また、そもそも、想定外の危機が生じたときには、利害関係人がそれぞれの立場から最適な解決策を提示し、手探りで利害を調整して合意を形成せざるを得ない。
 本書は、実体験に裏打ちされた豊富な事例を提示することにより、不動産ファイナンスにおいて予定調和が実現しなかったときに、レンダーとして債権をどのように保全・回収すべきかを詳細に解説・提言するものである。今後は、本書で示された考え方や手法が、不動産ファイナンスの再生と回収についての実務の道標となっていくことであろう。 藤瀬 裕司