Ⅲ巻 付随業務・周辺業務・Fintech編

30003ATMレシートへの広告掲載

ATMのレシートの裏面や余白部分に広告を掲載することができるか

結論

自行商品についての広告を掲載する場合、当該行為は、それ自体が独立した業務とは評価されないと考えられるが、他社商品について広告を掲載する場合には、銀行法の業務範囲規制との関係で、「その他の銀行業に付随する業務」として認められる範疇に限り、行うことが可能である。

解説

問題の所在

ATMのレシートの裏面や余白部分への広告掲載は、①自社商品についての広告の場合と②他社商品についての広告の場合に分けられる。

①について、当該行為の規模や目的に照らし、銀行の業務に付随して行われることが、性質上当然に予定されるものであれば、それ自体が、独立した業務と評価されるものではないと考えられる。ATMレシートの裏面や余白部分への広告掲載は、コストを抑えるべく、既存の媒体を活用した、顧客に対する情報提供という性質をもつものであり、その性質上、銀行業務に付随して行われることが、当然に予定されると考えられる。よって、①の場合には、独立した業務として、業務範囲規制が適用されるものではないということになろう。

②について、他社商品の広告掲載行為は、銀行法10条1項各号の固有業務、同条2項各号に列挙される付随業務、その他同法または他の法律で具体的に営むことを許された業務(「法定他業等」同法11条・12条)に当たらない。したがって、当該業務が「その他の銀行業に付随する業務」(同法10条2項柱書)の範疇にあるものでなければ、他業禁止(同法12条)の観点から認められないこととなる(令和3年7月1日現在)。

「その他の銀行業に付随する業務」の判断にあたり考慮するべき4要素

「その他の銀行業に付随する業務」の範疇にあるかの判断にあたっては、主要行等向けの総合的な監督指針(「主要行監督指針」)Ⅴ-3-2(4)において、他業禁止(銀行法12条)に十分留意し、①当該業務が銀行法10条1項各号、同条2項各号に掲げる業務に準ずるか、②当該業務の規模が、その業務が付随する固有業務の規模に比して過大なものとなっていないか、③当該業務について、銀行業務との機能的な親近性やリスクの同質性が認められるか、④銀行が固有業務を遂行するなかで正当に生じた余剰能力の活用に資するか、という観点を総合的に考慮することとされている。

ノーアクションレター制度による照会事例

さらに、主要行監督指針Ⅴ-3-2(4)(注4)においては、「その他の銀行業に付随する業務」の範疇にあるかどうかを判断する際の参考として、一般的な法令解釈に係る書面照会手続およびノーアクションレター制度における回答を参照することとされているところ、ATMのレシートの裏面や余白部分を、他社に広告媒体として使用させる行為が、その他付随業務に該当するか否かについて、法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)による平成14年11月25日付照会文書および平成15年7月1日付回答文書の内容が公表されている。当該回答文書において金融庁は、照会文書に記載された照会者の業務に限定しつつも、ATM取引明細票等の余白部分を広告媒体として他者に使用させることを業務として行うことは、銀行法10条2項柱書の「その他の銀行業に付随する業務」と認められ、他業禁止に違反しないとする。

照会文書は、上記主要行監督指針の4要素について、④から降順に検討しており、④を重視していることがうかがえるが、これをふまえると概要、以下のようにまとめられる。

④取引明細票はATMによる取引処理を行うために必要なものであり、その余白および裏面は取引に使用せず取り除くこともできないスペースであることから、銀行の固有業務の遂行に必要な資源の余剰部分を活用したといえ、「銀行が固有業務を遂行する中で正当に生じた余剰能力を活用」した業務と考えられる。

③銀行業務とのリスクの同質性については、事務ミス・システム障害による契約不履行リスク、レピュテーションリスク、過大な投資リスクのそれぞれにつき、異質のリスクではない、または固有業務におけるリスクと比較して小さいといえ、リスクの同質性が認められる。また、同じく③銀行業務との機能的親近性については、送金・預金などの固有業務上の情報提供と機能的な親近性があると認められる。

そして、②本件業務の事務量および収益は、ATMにより処理される預金・為替業務におけるそれと比べ、過大なものではないと考えられる。

最後に、①銀行法10条2項各号で列挙される業務と対比すると、銀行が固有業務を遂行するに必要なATM設備の管理業務と類似し、かつ業務内容が情報提供にとどまること、その他④、③の点を考慮し、「銀行法10条1項各号・2項各号に掲げる業務に準ずる業務」と考えられる。

①については比較的緩やかな検討が行われているようであり、②、③のリスク同質性、④について十分な検討がなされる場合には、すべての要件の検討を必ずしも要しないとの見方もある。また、③の、銀行業務とのリスクの同質性については、固有業務等が他業務の影響を受けてサービス低下を招き、預金者等の資産や取引者の安全が阻害される事態を防止するという他業禁止の趣旨と直結するものとして、詳細かつ十分な検討が求められる、とも考えられよう(以上につき、森下国彦・渡邉雅之「銀行の「その他の付随業務」」金法1683号18頁以下参照)。